コンプライアンスチェック導入コラム

プロセスを構築する〔3〕業務フローにおけるコンプライアンスチェックの位置づけ

2025年2月14日掲載

コンプライアンスコンプライアンスチェック業務フロー

こんにちは。このコラムでは、コンプライアンスチェックの実務における基本的な考え方や調査方法について解説します。

初めての方にも理解しやすいよう、例を交えてわかりやすく説明していますので、これからコンプライアンスチェック体制の導入を考えている方から、既にコンプライアンス業務を担当されている方まで、リスク対策に関わる幅広い層の方に読んでいただきたい内容です。

目次

  1. プロセス構築のために検討すべき事項
  2. タイミング×チェック対象のマトリックスを作る
  3. 定期チェックの重要性
  4. 業務フローにおける自動化(API)の活用 -与信限度額の増額申請時を例に

01プロセス構築のために検討すべき事項

コンプライアンスチェックのプロセス構築にあたって検討すべきことは、大きく分けて以下の3つです。

  1. 個々の案件や取引相手における見極めのポイント(判断要素)
  2. チェックの方法と情報源
  3. 業務フローにおけるチェックの位置づけ(どの段階でどのようなチェックを行うか)

今回のコラムでは、このうちの「業務フローにおけるチェックの位置づけ」について解説します。

本シリーズの内容を整理したチェックシートと併せてコラムをご覧いただくと、よりわかりやすいかと思います。ぜひこちらからご取得ください。

コンプライアンスチェック実践シート

02タイミング×チェック対象のマトリックスを作る

業務の流れに応じてどのようなチェックを実施していくかを決めるに際しては、チェックのタイミングチェック対象の2軸でマトリックスを作り、各ボックスにチェックの内容を規定していく方法が考えられます。

タイミング

チェックのタイミングは次の3つに大別されます。

  1. 新規取引のタイミングで行う新規先チェック
  2. 既存先を定期的に一斉にチェックする定期チェック
  3. 新規先・定期チェックで怪しいと判定されたものの、監視することを条件に取引を認めている相手に都度行うモニタリング

なお、1.の新規先チェックについてはその中でも、初回訪問のアポイントを取得する前の段階で行うチェック、訪問後に商談を更に進める段階で行うチェック、社内稟議の段階で審査部門が行うチェックなどに大別されます。

チェック対象

チェック対象の選定では、取引先のうちリスクの高い属性・業種・取引を重点チェック対象として区分し、より入念にチェックを行うリスク・ベース・アプローチ(リスクに応じた労力の投入)の考え方を取り入れるのも一案です。ただ、そのような絞り込みをせず全件についてチェックを行っている企業もあります。

リスクが高い属性・業種としては、例えば、反市場勢力による乗っ取りの対象とされやすい業績不振の新興上場企業、談合・贈収賄等が絡みやすい公共事業関係企業、マネーロンダリングや特殊詐欺の道具になる商材(電話回線やスマートフォンなど通信機器等)の販売業者、警察白書で暴力団関係企業が相対的に多いと列挙されている建設業、不動産、労働者派遣事業、風俗営業、金融業、産業廃棄物処理業などが挙げられます(このほか筆者の経験では、美容・食品・芸能・高級品・投資関連など多岐に及んでおり、一概に言えない状況になっています)。

リスクの高い取引形態として紹介による取引を挙げておきます。既存顧客から紹介を受ける場合、営業パーソンの脇が甘くなることが往々にしてあります。顧客からの紹介を無下にできず、本当は怪しいと思っていてもそれを伏せて社内稟議をあげてくる可能性があります。自社の社員が顧客と仲良くなり過ぎで、自社と利益相反する行為を行う可能性もあります。不祥事の予防の観点から紹介取引は関係者を入念に調べましょう。

タイミング×チェック対象のマトリックスを作り、実施するチェックの内容を決めていきます。このうち本稿では紙幅の都合により定期チェックにフォーカスして概説させて頂きます。

03定期チェックの重要性

定期チェックの意義

定期チェック(棚卸チェックともいわれます)とは、定期的に既存の取引先について一斉にコンプライアンスチェックを実施することをいいます。
定期チェックは非常に重要です。新規先チェックの際には問題がなかった相手が、いつの間にか問題企業に転落していることが往々にしてあるからです。

特に「取引先が不祥事や事件を起こしていないか?」は最低限のチェックとして行うべきです。なぜなら、不祥事や事件というのは、反社会的勢力に侵食される契機となりますし、経営悪化や倒産の兆候ともいえる重大事象だからです。不祥事・事件→信用失墜→業績悪化→資金調達の困難化→怪しい筋からの資金調達→反社の関与→不祥事・事件→信用失墜→倒産といった「負のループ」に取引先が陥ってしまうかもしれません。その予兆に気づくためにも既存取引先について定期的にコンプライアンスチェックを実施する必要があるのです。

しかも、不祥事や事件は新聞などで報道されるケースも多く、それを「知りませんでした」とは言いにくいものです。「新聞沙汰になった不祥事さえも知らなかったの?」と後々非難されないよう、取引先を定期チェックする体制を整えておくべきです。

チェックの作業例

定期チェックの作業は、チェック対象(要チェック先)のリストアップと記事データベース等でのスクリーニングが骨格となります。

〈1〉チェック対象のリストアップ

原則として既存取引先を全てリストアップします。各取引先につき「商号」および「代表者名」は最低限リストアップしますが、これらが前回チェックした時と同じであるとは限りません。

そこで商号・法人登記を閲覧し、商号や役員などに変動はないかを確認します。企業が反社会的勢力に浸食されるなど異変が生じている場合では、商号や役員など登記事項が頻繁に変動します。これらの異変をキャッチするためにも、原則的には登記情報を確認したうえでリストを整理していくのが安全です。

なお、取引先すべてについては難しいかもしれませんが、大口先など重要な取引先については、取引先そのものに限らず、代表者の兼務先や同じ場所の法人など関係先についてリストアップしておきたいところです。

〈2〉記事データベース等でのスクリーニング <大量件数はチェック代行を活用>

〈1〉でリストアップされた対象に対し、不祥事や事件が生じていないか【新聞・雑誌記事データベース】(ジー・サーチ等)でスクリーニング(検索)していきます。
チェック対象の企業名や人物名を、コンプライアンス関連のネガティブワードを組み合わせた検索式と掛け合わせて検索します。ここで記事がヒットしなければ、チェック対象は「問題なし」という判断になります。反対に記事がヒットした場合は、ヒットした記事の中身を見て判断するという流れです。

この「ネガティブワードを組み合わせた検索式」は、初めてコンプライアンスチェックを実施する場合、用意が無いかと思います。ジー・サーチが提供する【Gチェッカー】という専用のチェックツールでは、おすすめの検索式があらかじめ用意されているので、こちらを利用すればすぐにチェックを実施できます。

また定期チェックの場合、要チェック先は相当に大量の件数に及ぶはずです。ジー・サーチでは、数千件以上のワードをまとめて検索できる【一括スクリーニングWeb】というサービスも提供しているので、こちらを活用してみるのもよいと思います。要チェック先のリストを登録すれば、各々のチェック先についての検索結果(該当記事のURL等)を翌日の朝には確認できます。

検索が完了したら、ヒットした記事を精査し、事の軽重やリスクを評価し、追加調査の要否などを判断していきます。特に不祥事・事件に関わる情報が検出された先については、その後の「逆風」に耐えられる体力があるかなどが着眼点となります。従い、ジー・サーチの【企業情報】などを活用し、取引先の業績推移や信用評点などを確認したいところです。また、企業が「負のループ」に陥る過程で不動産を担保に怪しい先から資金を借り入れる可能性もありますので不動産登記も確認したいところです。その他では、インターネットの検索も風評などがつかめる場合がありますので有効です。

04業務フローにおける自動化(API)の活用 -与信限度額の増額申請時を例に

コンプライアンスチェック(反社チェック)では、省力化できる作業はできる限り省力化したいものです。一方で、リスク管理のレベルも上げていきたいところです。
このようなジレンマを解決するのが、自社の取引先管理システムと記事データベースとの連携です。ジー・サーチでは【コンプライアンスチェックAPI】として対応しています。

これは、自社の取引先管理システムと記事データベースがシステム的に連携し、コンプライアンス関連の記事情報を手間なく照会・チェックできるようにする仕組みです(反社チェックの一部工程の自動化)。

例えば、既存の顧客について注文が増える見込みのため与信限度額の増枠申請を検討する場合を思い浮かべてみます。
「注文が増えて嬉しい!」とすぐに喜ぶのは少し待ってください。なぜなら、その顧客が脱税・贈賄・談合などコンプライアンス上の問題を起こした結果、その顧客に納入する競業他社が手を引いてしまい、自社への注文が増えているだけかもしれないからです。
ババをつかまされないためにも、顧客からの注文状況とコンプライアンス関連の記事情報は、常に隣り合わせでタイムリーかつ手間なく照合できるような体制がリスク管理を強化するうえで重要です。

顧客管理システムには、その顧客の財務情報や信用評点(社内格付)を格納しているケースも多いと思います。しかし、事件・不祥事の影響が財務や評点に反映されるまでにはタイムラグがあるのが通常でしょう。
従い、顧客から注文に関する相談を受けた営業担当者が、その時点で入手できる最新の事件・不祥事などの記事情報を、即座に顧客管理システムから手間なく照会・チェックできるような連携を取ることができればリスク管理の強化につながります。

なお、念のためですが、急な注文量の変化には敏感になることが非常に重要です。顧客に何らかの異変が起きたシグナルだからです。システム連携で手間なく記事情報をチェックしたうえで、場合によっては、相手企業への直接的な接触を図ることが必要でしょう。記事になっていない場合が当然多いですし、担当者自らが情報収集に動く姿勢が重要です。管理部門サイドも、与信限度額の増枠申請を審査する際には、その理由について十分な吟味が必要なことは言うまでもありません。このようなアクションや吟味に資源を投入するためにも、検索など単純作業は省力化・自動化するべきだと思います。

ジー・サーチの自動化の仕組みである「コンプライアンスチェックAPI」では、ネガティブワードを設定した上でのシステム連携も可能ですので、取引先のコンプライアンス面だけに絞って記事情報をピックアップすることもできます。また、新規顧客からの申込フォームと記事データベースを連携させることも可能なようです。詳細は、ジー・サーチに相談してみてください。

次回のコラムでは、コンプライアンスチェックの結果、ネガティブ情報がヒットしてしまった場合の判断と対応について説明します。

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本コラムの著者について

著者近影

アクティブ株式会社 代表取締役​

泉 博伸 氏​(いずみ・ひろのぶ)

東京国税局に入局し、国税滞納法人等の調査・差押え等の徴収実務に従事。その後、大手信用調査会社で信用調査、商社審査部で与信リスク管理の実務を経験。​

2016年8月、アクティブ株式会社を設立。反社会的勢力・マネーロンダリング・与信・社内不正にまたがる横断的視点でリスク調査に取り組んでいる。また調査業務を通じて得た知見をもとに、審査担当者や営業パーソン向けの研修やブラッシュアップ講座も手掛けている。

コンプライアンスチェック導入コラム 記事一覧

  1. 第1回コンプライアンスチェックとは?リスクの基本と不可欠な調査方法/与信との違い

  2. 第2回プロセスを構築する〔1〕
    個々の案件(取引相手)における見極めポイント

  3. 第3回プロセスを構築する〔2〕
    コンプライアンスチェックの方法と情報源

  4. 第4回プロセスを構築する〔3〕
    業務フローにおけるコンプライアンスチェックの位置づけ

  5. 第5回ネガティブ情報がヒットしたら?コンプライアンスチェックの判断と対応

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