コンプライアンスチェック導入コラム

法人審査の実在チェック:注意点と現地訪問しない場合の対応

2025年8月25日掲載

リスク対策法人調査取引先審査取引相手の実在確認

こんにちは。このコラムでは、コンプライアンスチェックの基本中の基本ということで、反社チェック、信用調査、与信管理など、取引相手を調べて判断する「法人審査」のノウハウを解説します。

初めての方にも理解しやすいよう、例を交えてわかりやすく説明していますので、これからコンプライアンスチェック体制の導入を考えている方から、既にコンプライアンス業務を担当されている方まで、リスク対策に関わる幅広い層の方に読んでいただきたい内容です。

目次

  1. 法的に存在するか?の確認方法
  2. 紛らわしい表記の商号にだまされない
  3. 現地面談こそがなりすましを見破る王道手段
  4. 現地訪問しない場合の実在確認の方法

01法的に存在するか?の確認方法

前回の記事にて、法人審査において必ず確認しなければならない3つの「実」をご紹介しました。相手が法的に存在するか(実在)、実際に稼働しているか(実体)、そして稼働の状態に良くない要素がないか(実態)。
今回はこのうちの「実在」確認について、その方法や注意点を解説させていただきます。実体および実態の確認の土台となる、法人審査のファーストステップです。

法人審査において、新規取引の相手(候補)を調べる際、まず確認すべきは、その相手が法的に存在するのか?逆にいえば法人を仮装したデタラメな法人モドキではないか?ということです。

株式会社であれば「会社法」に基づき設立・登記され、社団法人や財団法人あれば「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」などに基づき法人が設立・登記されているはずです。医療法人であれば「医療法」、NPO(特定非営利活動)法人であれば「特定非営利活動促進法」など、根拠となる法律に基づき設立・登記されるのが法人です。
相手が「会社」や「法人」を名乗るのであれば、必ず登記されているはずです。従って、法的に存在するか?を確認するためには、登記を取得する必要があります。(会社であれば商業登記、それ以外の法人であれば法人登記と呼ばれます。)

ただ登記の取得には一定の費用がかかるため、単に法的に存在するかどうかを確認するだけでしたら、まずは法人番号の有無を調べてみることから始めてもよいと思います。

法人が法務局で登記されると、自動的にその情報は国税庁に伝達され、国税庁が法人番号を指定します。この法人番号は国税庁の「法人番号公表サイト」で公表されており、法人名(商号・名称)で検索することで法人番号の有無を確認できます。相手が「会社」や「法人」を名乗るのに法人番号が見つからないとなれば、架空法人である疑念が高まります。

次回以降のコラムで解説する「実体」や「実態」の確認の際にも、設立年月日、事業目的、役員などの情報が必要となりますので、法人番号の存在が確認できたとしても、実務上は登記を取得することは必須です。
登記は、法務局に出向いて取得するか、一般財団法人民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」を通じてオンラインで取得することが可能です。

02紛らわしい表記の商号にだまされない

法人番号の確認や登記を取得する際に、相手の法人名をキーワードとして検索を行いますが、その際の注意点があります。例えば、「オテ・マテ・ワン株式会社」を仮装する「オテマテワン株式会社」のような、紛らわしい商号の存在です。

あなたがやりとりをしている相手のホームページや名刺には、「オテマテワン株式会社」と表記されているとします。
法人番号の確認や登記をオンライン取得する際に、「オテマテワン」をキーワードとして検索すると、「オテマテワン株式会社」の法人番号や登記にはたどり着けませんでした。ヒットがなかったため、次にフリガナ検索の欄に「オテマテワン」と入力して検索してみます。すると、「オテ・マテ・ワン株式会社」の情報にたどり着くことができました。

しかし、ここで注意すべきなのが、「・」の存在です。架空法人を操り犯罪を行う詐欺グループなどは、この「・」を巧妙に利用することがあります。実在する「オテ・マテ・ワン株式会社」を仮装するために「オテマテワン株式会社」や「オテ・マテワン株式会社」など紛らわしい商号で表記するのです。

「オテマテワン株式会社」で検索し法人番号や登記がないことを相手に指摘すると、「そんなはずはない。ちゃんと調べてください」と、とぼけた揚げ句、検索方法が悪いと逆にクレームをつけてくる。クレームを受けた自社の審査担当者は自信がなくなり、相手が「・」を省略して表記しているだけだろうと勝手に思い込む。そして「オテマテワン株式会社」を「オテ・マテ・ワン株式会社」だと誤った認定をして登記を取得し、取引の手続きを進めてしまう・・・。

このような事態に陥らないためにも、相手のホームページや名刺における表記はそのものとして審査をすることが基本となります。検索でヒットしないからといって勝手に解釈することは避けましょう。また正式にはアルファベット表記なのに、ホームページや名刺ではカタカナのみで表記されている法人も、何か悪い意図があるかもしれないため要注意です。

03現地面談こそがなりすましを見破る王道手段

「オテ・マテ・ワン株式会社」が実在し、登記がある法人だとしても、取引の相手方担当者として登場してきた人物が、同社の役員や従業員であると仮装している(なりすましている)可能性もあります。同社とまったく無関係、あるいは過去に在籍したことはあるが今は無関係の人物が、同社の現任役員や従業員として接触してくるような「偽計」に対してどのように対策すればよいのでしょうか。

王道は現地確認です。「オテ・マテ・ワン株式会社」の登記上の本店所在地に訪問し、その事務所内で当該人物と名刺交換し面談をすることです。
法人対法人のビジネスシーンにおいて、初回訪問の段階で身分証明書や役員選任の議事録の写しなどを徴求するのは非現実的ですが、現地での面談を実施することにより、少なくとも「登記という公的資料に記された所在地の敷地内で名刺交換できる人物」が相手方担当者である、という実在確認が取れたことになります。厳密には当該人物が「顧問」「相談役」など名刺を持っているだけで当該法人と何ら契約関係にない場合(単なる代表者の友人など)もあるので、商談が進展していく過程で代表者とも会うなど、更なる確認が推奨されます。

法人確認の際は、法人自体の実在確認だけでなく、取引の相手方担当者が、当該法人に本当に所属しているかについての確認も重要なのです。

04現地訪問しない場合の実在確認の方法

相手方担当者の所属も含めた実在確認は、現地訪問が王道手段ですが、想定の取引額が少額であったり、遠方であったりと、それが難しい場合もあります。

そのような場合、まず取引の初期段階で、以下のような簡易な方法によって、実在についての一定の確認を実施することが考えられます。なお、犯罪収益移転防止法の適用を受ける事業者(金融機関等)は同法に基づく取引時確認(通称本人確認)を実施しているはずですので、ここでは同法の適用を受けないBtoBの一般事業者様向けのご参考として記させていただいております。

  1. 相手方担当者のメールアドレスとホームページのドメインが一致し、かつホームページ記載の所在地が登記上の本店所在地と一致することを確認する。
  2. 登記上の本店所在地が明記されたホームページに記載されている固定電話番号に架電し、担当者と通話する。
  3. 自社の会社案内や見積書等を相手の登記上の本店所在地に簡易書留による転送不要郵便で送付し、返送がないことを確認するとともに、その書類の内容を相手方担当者と電話またはメールにて確認する。

このように法人自体が法的に存在するか、そして取引の相手方担当者が当該法人に所属するかについての確認が、法人審査の基本中の基本となります。

次回は、実在、実体、実態の3つの「実」のうち、「実体」の確認方法について解説します。法的に法人が実在することは確認できたものの、はたして稼働の実体はあるのか?について、住宅地図などを活用した確認方法をご紹介させていただきます。

住宅地図を用いた確認は、G-Searchデータベースサービスで使える「ゼンリン住宅地図サービス」の利用がおすすめです。「建物詳細情報機能付き」の地図を出力すると、ブラウザ上でビルの入居者名を確認することができます。相手先が本当にそのビルに入居しているかの確認に加え、同じビルに入っている他のテナント名から、そのビルに入居する事業者の規模を把握することも可能です。

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本コラムの著者について

著者近影

アクティブ株式会社 代表取締役​

泉 博伸 氏​(いずみ・ひろのぶ)

東京国税局に入局し、国税滞納法人等の調査・差押え等の徴収実務に従事。その後、大手信用調査会社で信用調査、商社審査部で与信リスク管理の実務を経験。​

2016年8月、アクティブ株式会社を設立。反社会的勢力・マネーロンダリング・与信・社内不正にまたがる横断的視点でリスク調査に取り組んでいる。また調査業務を通じて得た知見をもとに、審査担当者や営業パーソン向けの研修やブラッシュアップ講座も手掛けている。

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