導入事例
研究者 菅原様
2018年1月18日掲載
G-Searchデータベースサービスの決め手は初期費用の安さ。
博士論文を作るための情報収集目的に、地方紙の検索サービスを利用しています。
研究者
菅原様
インタビューのまとめ
- 博士課程進学時に提出する論文を作るための、情報収集目的に利用。
- インターネットの調査で埋まらない情報や、全国紙には収録されていない情報を、地方紙の記事で調べる。
- G-Searchデータベースサービスの導入は、初期費用の安さ(月会費300円プラス従量制の情報料)が決め手。
研究テーマは副首長(副市区町村長)
菅原さんは現在、全国1741市区町村(※1)の副市区町村長を研究テーマにしています。1自治体に複数の副市区町村長を置いている基礎自治体もあるため、総数は約1800人になるといいます。
- 1,741の内訳は791市、23特別区(東京)、744町、183村
調査内容は、名前から始まって、経歴、就任年月日(期数)、生年月日(就任時の年齢)等です(※図1)。
博士論文の情報収集のために利用
G-Searchデータベースサービスの利用は、17年2月頃からとのことです。
菅原さんは東京大学で行政法、同大学院で行政学、その中でも自治体行政学を学び、修士号を取得しています。旧郵政官僚だった祖父の影響もあって、政治や行政に小さな頃から関心を抱いていました。現在は、勤めていた民間企業を6月末に退社し、一般財団法人の研究所の客員研究員を務めながら、研究を進めています。
「副市区町村長の研究で修士号を取得しました。その内容を発展させて、博士課程進学時に提出する論文を作りたいと考えています。その情報収集目的に」というのが利用開始の動機とのことです。
「修士論文作成時には副市区町村長の経歴を調べるところにまで手が回らなかったので、その調査を開始しました。経歴を調べる場合、基本的には、その市区町村のホームページや広報、インターネット上に掲載されている議会議事録などをまず探します。しかし、必ずしもそれだけでは十分ではありません。埋まらない部分、特に町村については、別の手段が必要です。そこで、新聞で調べようと思いました。
国立国会図書館へ行くと、北海道新聞などの地方紙の現物か、それをマイクロフィルムにしたものを見ることはできますが、毎回行くのは面倒くさいし、資料が出てくるのに非常に時間が掛かるんです。あと、データ化されていないので、副市区町村長にいつ選ばれたのかが分かりません。最悪1年分全部の記事を確認しなければならなくなります。そういう不便さがあるんです。
それで思い付いたのが、全国紙の検索(データベース)サービスです。市立図書館で提供しているものを利用してみましたが、やはり全国紙では町村の分は出てきません。地方紙の情報を提供している検索サービスを利用するほかありませんでした。」
G-Searchデータベースサービス導入の決め手は、初期費用の安さ
そこで、菅原さんはその存在自体は知っていたデータベースサービスを検討します。N社については「料金によって使える期間が決まっているが、どれだけの期間使うかが分からなかった」ため、対象から除外。
ネット検索で出てきたG-Searchデーターベスサービスは「月会費300円プラス従量制の情報料だけで済み、利用期間の終わりを意識しなくてすむので」決めたといいます。
入会して良かったと思われた点は何でしょう?
「検索結果の出方など画面のインターフェースがすごくシンプルな点ですね。有料のGoogle検索みたいな感じです。」
縁の下の力持ちに焦点当てる研究
菅原さんの研究は、地方自治法でも簡素な規定しかない(※2)自治体の「縁の下の力持ち」に焦点を当てる内容です。他の研究者の先行論文はこれまで副市長止まりでした。
- 地方自治法での副市町村長に関する規定は以下の条文などにとどまります。
第161条 都道府県に副知事を、市町村に副市町村長を置く。ただし、条例で置かないことができる。2 副知事及び副市町村長の定数 は、条例で定める。第162条 副知事及び副市町村長は、普通地方公共 団体の長が議会の同意を得てこれを選任する。など
研究のテーマは2つだそうです。1つ目は副市区町村長の「役割」です。副市区町村長経験者本人にインタビューして聞き出す方法を取ります。今、約15人聞き終えたそうです。
もう1つはどのような人が選ばれるのか、つまり「経歴」です。国や都道府県の出身なのか、市区町村生え抜きの人なのかを調べて、それらの割合を計算していきます。国や県などの自治体支配の実態を見るためでもあります。
市区町村長経験者にもインタビューを実施し、副市区町村長をどのように選んでいるのかを聞き出します。それらによって、市区町村長が副市区町村長をどのように選んでいるのか、どう見ているのかが分かるといいます。
「市区町村長によって、職員の人事も含めてかなり広い職務を副市区町村長に任せている人や、逆に決定権を自分に集中して副市区町村長の裁量範囲を狭めている人がいます。だから、外形的な状況だけを見て、副市区町村長が機能していないとは一概には言えません。副市区町村長が機能しているかどうかを判断しているためには、市区町村長が期待していた役割を果たせているかを個別に見ていくしかありません」
具体的な方法は?
G-Searchデータベースサービスの具体的利用法をお聞きしました。例えばX村の副村長さんについて調べる場合は……。
「最初のうちは特に、なるべくお金を掛けないようにしようと思っていたので、氏名まではネット検索で調べました。それからG-Searchデータベースサービスの検索画面で、「氏名」、「村名」、「副村長」、「選任」の四つのワードを入れます。題名を見るだけでお金が掛かるので、出てきた記事のうち一番古いものから順に見ました。
それで大体の都道府県はなんとかなりました。しかし、福島県や奈良県は同じ県の中でも、中心部の地域版には無く、ある版にしか副市区町村長の就任の記事が載っていないものもありました。大体、1,741市区町村のうち、数件が不明のまま残りました。その場合は県立図書館のホームページからレファレンスの問い合わせをし、地方紙を調べて教えてもらいました」。
現在まとめているのは16年7月2日現在の在任者ですが、データは1年ごとに更新するため、毎年約200人分を調べ直す必要があるそうです。非常に手間の掛かる研究です。
「国会図書館で時間を掛ければ調べられるか、というと実際は不可能なんですよ。ある自治体の副市区町村長が何年何月何日に選任されました、という記事がどこにあるのかは分かりませんので。各都道府県の図書館に投げて、調べてもらうのは不可能ではないとは思いますが、やっぱり良心の呵責があるじゃないですか(笑)。研究者は、基本的には自分で調べるということが大事ですし」
今後は、次の副市区町村長選任時に市区町村長がどんな属性(生え抜きか、国・県出身者か)の人を選ぶのかに注目しているといいます。
「例えば、X村では今は国の人だけど、次もやはり国の人にするのかどうかです。政治学には『経路依存』という言葉があります。ある意味で先例踏襲ともいえますが、同じ状態が続くのか、それとも変わるのか。変わるとしたらそれはなぜなのか。究極的には市区町村長が副市区町村長を選ぶ時にどのような要因が関わってくるのかを知りたいと考えており、そのなかで経路依存性がそこにどの程度影響を与えているのかを明らかにしたいと考えています」
コスト削減のコツは?
個人利用の場合、法人よりもコスト削減を重視するのは当たり前です。菅原さんはどんな工夫をしているのでしょうか?
「タイトル表示にも課金されるため、検索結果の表示数をいかに少なくして欲しい情報にたどり着くかです。検索ワードを増やして絞り込み、欲しい県の情報だけを得るために、無関係の地方紙や全国紙は外すとか」
今後、どんなサービスをお望み?
G-Searchデータベースサービスに今後欲しい機能などは何でしょう?
「うーん、スピードなどでストレスは感じたことは無いので……そうですね、一つは地方紙を網羅してほしいですね。あと、一度見たページを再度見られるように履歴を保存できれば便利です。AIのように、関連する記事の一覧を自動表示してくれたり、キーワードを指定しておけば関連記事を日々メールで教えてくれたりするアラート機能もあったら助かりますね。
現在のデータベースサービスとはズレますが、研究者の役割の1つに、取り組むテーマの先行研究を整理するというのがあるんですよ。たくさん本を読んで、読んだ本の中でテーマに関するものを選んで、重み付けをしていくわけです。その意味では、行政専門誌の検索ができるようになれば、便利です。さらには、AIが発達して、あるテーマの論文を書こうと思ったら、この本とこの本、この論文は重要です、みたいなことが分かるようになると楽ですけど、そうすると研究者の価値も下がってしまうかもしれません(笑)」
菅原さんの研究成果は近く本にまとめられることが決まっているそうです。楽しみですね。
取材・執筆:大西 督人(元毎日新聞記者)
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