与信をマナブ!営業を成功に導く基礎知識
第2回取引先の与信情報の収集
こんにちは、中小企業診断士の杉山岳文です。今回は与信情報の収集方法を紹介していきたいと思います。
前回、与信の第一歩は「相手を知る」ことだ、と説明しました。新規取引、または既存の大口の取引先の信用情報は常に把握しておきたいものです。新しい取引先の与信観点として以下をあげました。
- どのような事業を行う会社なのか
- 事業を開始後、どの程度の実績(期間と売上)があるのか
- 事業の業績推移はどのようになっているか
- 支払い能力に問題がないか
- 会社の株主や役員構成、主な取引先などに問題がないか
これらの情報を収集し、評価することを与信評価と呼びます。では、どのような情報を収集するべきか解説します。
与信評価に必要な情報としては、自ら収集した「一次情報」、外部による情報収集の「二次情報」に分けられます。
一次情報(直接取得した情報)
情報学では一次情報は自らが直接取得した情報として区分され、情報価値が非常に高いのが特徴とされています。与信でもこれは同じです。新しい取引先について直接得られる情報というのは情報鮮度、取引におけるエビデンス性に優れています。
一般的には、会社概要が記載されたパンフレット、登記簿、決算書(や税務申告書)類の財務情報、業種によっては許認可等の法的管理情報などがあげられます。新規取引与信としてこれらの情報提供を要求するのが基本です。取引先が財務情報等の開示を拒むケースもありますが、その際は後述の二次情報から情報を得ることも可能です。
しかし、最も役に立つのは取引経緯、担当者の訪問した際の違和感等の知見です。
新しい取引先はどのように自社にアプローチしたのでしょうか。自社が取引を持ちかけたのか、取引先からのコンタクトだったのか、誰かの紹介なのか。
この中で最もリスクが高いのが「紹介」です。自社役員の紹介案件の場合、与信調査が疎かになりがちです。実際、紹介した役員も「懇親会で名刺をもらった」くらいの認識の場合もあり、一種の与信の抜け穴になりがちです。また「紹介」は反社会的勢力のアプローチとして最も多いものです。
訪問した担当の知見は非常に役に立ちます。パンフレットに記載された企業規模に比べて、
- オフィスや社員の数が少ない
- 社員の態度・マナーが悪い
- 在庫品と思われる商品がオフィスに山積み
- 条件確認を行わず強引に取引を進めようとする
などです。
これらの一次情報は必ず確認するようにしましょう。
二次情報(外部情報)
第三者による情報は取引先から取得した情報の裏取りにも使えます。
新規の取引先の場合は、帝国データバンクや東京商工リサーチ等の調査機関が収集した「信用調書」をチェックするのもいいでしょう。信用調書は調査員が直接会社に訪問し、社長のインタビュー、登記内容、業績、資産状況、取引リスクを周辺情報も含めて収集・評価したものです。価格は3万円前後となり少々高額に思われるかもしれませんが、高額取引のリスクを考えればリーズナブルです。海外ではコファスやリスクモンスター、ダウ・ジョーンズなどが提供する調査も活用しましょう。
企業概要、業績、信用評価点等のデータをまとめた「企業概要データ」は与信調査に最もよく使われている情報です。1社あたり1,600〜2,000円程度で入手できます。「登記簿」が直接入手できない場合は法務局やインターネット登記情報提供サービスで入手することも可能です。
また、企業の事業活動の情報を得るために、新聞・雑誌の記事検索も有効です。ポジティブ情報としては企業の新サービスや提携等の記事・リリースがありますし、ネガティブ情報としては情報漏洩、行政指導等の記事も確認できます。新聞・雑誌の検索は G-Search 等のビジネスデータベースサービスを使うのが一般的です。最近では取引先のコンプライアンスチェックにもよく使われています。
最後にインターネットによる情報収集ですが、情報の信憑性・情報源に気をつけて下さい。上場企業のIR情報は有用ですが、会社ホームページの内容等は事業運営の実態や会社としての存在事実と異なる情報でも、どうにでも作ることができてしまいます。くれぐれも情報の評価には気を払い、活用すると良いでしょう。
次回は情報収集のためのツールをご紹介していきます。
取引先の与信調査に欠かせない、企業情報・与信情報サービスの詳細は以下からご覧いただけます。