与信をマナブ!営業を成功に導く基礎知識
第1回与信のキホン
こんにちは、中小企業診断士の杉山岳文です。これから「与信をマナブ」と題して数回にわたり、ビジネスに必須の「与信管理の基本」、「与信管理に使えるツール」そして「コンプライアンスチェック」について解説していきます。
与信初心者でも分かりやすい説明を心がけて執筆していきます。どうぞ、よろしくお願いします。
与信って何?
ビジネスの現場では「与信管理」や「取引先のリスク管理」のような言葉を聞きますよね。では、与信管理の「与信」とはどのようなものなのでしょうか。
与信とは「(各取引先に相応しい)信用を与える」ということです。
ビジネスにおける商取引は、金銭的対価を伴う商品(モノ・サービスなど)の提供者と購入者の間で行われる事業間取引のことを指しますが、企業取引においては一般的に商品と金銭的対価の交換にはタイムラグが発生します。例えば、「商品を先に顧客先に納入し、納入月末に請求書を発行し、顧客が請求書受領後に代金を支払う」というイメージです。もし代金支払いまでに顧客企業が倒産してしまったり、代金を不当に支払われなかったら困りますよね(そのような債権を回収できない状況を「貸倒れ」と呼びます)。
そこで新しい取引を行う際には、商品を提供する取引先がどの程度信用できるか、支払いに問題が発生しないかを吟味・検討しなければなりません。検討結果として、新しい取引先と商取引を行うべきか、現金払いや前金等の条件を付けるべきか、はたまた取引をしないべきなのかを判断することになります。この取引判断を「与信」、取引に関する全般的なリスク管理体系を「与信管理」と呼ぶのです。
与信は具体的にどのようにすればいいの?
新規顧客が自分の会社の取引先として相応しいかはどのように調べれば良いのでしょうか。
与信の第一歩は「相手を知る」ことです。与信のためには新しい取引先・既存の取引先の情報を収集することが必要です。では、どのような情報を集めれば良いのでしょうか。取引先の審査観点としては多岐に渡るのですが、
- どのような事業を行う会社なのか
- 事業を開始後、どの程度の実績(期間と売上)があるのか
- 事業の業績推移はどのようになっているか
- 支払い能力に問題がないか
- 会社の株主や役員構成、主な取引先などに問題がないか
などの情報を収集、検討する必要があります。上記は取引を開始する上での最低限の内容で、実際には取引における不祥事事案や反社会的勢力とのつながりがないかをチェックする「コンプライアンスチェック」も必要となります。
また取引先の情報収集だけでなく、
- 取引案件に不審な点はないか
- 商談に至った経路は
例えば、全く見ず知らずの会社から大量の商品購入を持ち掛けられたら心配になりますよね。取引先の審査だけでなく、商談・取引そのものに関する審査も必要です。
そして、自社の財務的体力も与信には関係します。例えば、100万円の取引も、売り手が零細企業の場合と大企業の場合ではリスクの大きさが変わってきますよね。万が一、代金回収に問題が発生しても自社の経営に影響がないようにリスクを抑え込む必要があります。取引を小ロット化する(数回に分ける)、前金の設定や前受けにする、手形取引を要求するなど、商談や取引条件のカスタマイズも必要になるかもしれません。
今回は与信のキホンを解説しました。
次回以降、取引先の与信評価法、実際に使えるツールなどを紹介していきます。お楽しみに。
取引先の与信調査に欠かせない、企業情報・与信情報サービスの詳細は以下からご覧いただけます。