調査コラム
小型・高速化を実現する次世代半導体材料GaN、SiCを追う
2021年7月15日掲載
GaN、SiCとは?
「GaN」は、ガリウムと窒素の化合物です。シリコン素材に比べて小型化が可能なため、USB充電器などでの利用も増えています。
「SiC」は、シリコンと炭素の化合物です。電気自動車(EV)の充電器などの自動車分野や、太陽光発電施設や鉄道車両などの制御装置などの分野で活用されています。
自動車やスマートフォンなど、電力制御に利用されるパワー半導体が市場拡大を続けるなか、GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素:シリコンカーバイド)は次世代パワー半導体の材料として注目され、開発が活発化しています。
2006年から15年間増加傾向
右肩上がりの検索傾向
「GaN」と「SiC」について、G-Searchデータベースサービスの新聞・雑誌記事横断検索で調べると、2006年頃から新聞記事に取り上げられる件数が増加傾向にあり注目度が高まってきたことがわかります。
素材名を含む新聞記事を検索する方法
「GaN」と「SiC」は3文字のアルファベットの連続のため、その文字だけで検索すると無関係な記事も検索結果に含まれてしまいます。
このような場合には主要文脈に含まれる文字列を加え、「次世代 AND (GaN OR SiC)」という検索式で調べます。こうすることで、次世代半導体素材としての「GaN」または「SiC」を扱う記事を抽出しやすくなります。
GaN と SiC の伸びかた
GaNは堅調に伸び、SiCは開発が進むたびに注目されている
青線が「GaN AND 次世代」という検索式で検索した結果、オレンジ線が「SiC AND 次世代」という検索式で検索した結果です。
GaNは1999年以後堅調に伸び、2014年にGaNの半導体材料を用いた青色発光ダイオード(LED)がノーベル物理学賞を受賞後、さらに角度を上げて伸びています。
SiCは3回伸びのピークがあります。
- 2010年は基盤にSiCを活用した次世代のパワー半導体の生産が本格化。デバイス専業メーカーのロームがSiCダイオードやトランジスタの量産化に世界で初めて成功し、電車や電気自動車、太陽光発電装置などの機器での省エネ効果が期待できると話題になりました。
- 2014年には、日本電産がSiC半導体を搭載したインバーターで「SRモーター」を駆動させる技術を開発したと発表。モーターの省電力や小型化につながる世界初の技術として話題になりました。自動車分野でもSiCに関するニュースが増えました。ホンダがSiCを適用した燃料電池車のコンセプトモデルを発表したり、トヨタ自動車もSiCを搭載した試作車で公道実験を始める計画を明らかにしたり、自動車メーカーに関する記事が多く出ています。電装品メーカーの記事も増えています。
- 2018年には、三菱電機、富士電機、ローム、サンケン電気、デンソー、テスラ、昭和電工など、SiCパワー半導体の導入を進める企業のニュースが多数掲載されました。電気自動者(EV)向けの需要拡大にあわせ、自動車や産業機器業界の多数の企業の動きが活発化したことがわかります。
直近一年の記事から最新動向を見る
化学・電気・鉄鋼・自動車の業界新聞のほか、海外紙にも登場
一年分で記事を検索すると、化学工業日報に多く登場しているほか、電気・鉄鋼・自動車・金融などの様々な業界新聞や、エマージングマーケットニュースなどの海外紙、日経BPで取り上げられています。
2021年から日立アステモ、豊田通商、三菱電機、富士電機、ロームなど、企業の取り組みを伝える記事が出始めています。
記事の一例をデータベースからご紹介します。
- 矢野経済研究所が車載用半導体世界市場調査 2030年には586億ドル規模に(2020.05.30 日刊自動車新聞)
- 環境省/省CO2実現へ/窒化ガリウム製品の実証事業を公募(2020.07.31 鉄鋼新聞記事情報)
- GaN結晶を高品質化/NIMS、東工大が新手法開発(2020.11.16 電気新聞)
- 日立アステモ、次世代モビリティに投資、既存車領域は選択的に(2021.01.21 化学工業日報)
- Emerging Tech 解説・電子デバイス~ゼロカーボン加速で主役へ パワエレで社会問題を解決(2021.03.01 日経エレクトロニクス)
- 豊田通商と関西学院大/次世代SiC基板/欠陥無害化に成功(2021.03.02 日刊産業新聞)
- 次世代半導体素材の需要が急拡大、集邦報告(2021.03.15 NNAアジア経済情報 台湾)
- 〔特集〕半導体 パワー半導体 自動車電動化で市場拡大 三菱電機、富士電機、ローム(2021.03.23 エコノミスト)
物質名・素材名で検索した新聞記事から、技術開発動向を追う
今回は「GaN」「SiC」について動向を追いかけました。G-Searchデータベースサービスの新聞・雑誌記事横断検索なら、業界専門誌の過去情報までさかのぼって検索できます。一般的なウェブ検索では見つけられない技術開発の動向調査にお役立てください。
執筆:G-Search編集部
競合調査や市場調査のデスクリサーチに
G-Searchデータベースサービスを活用
競合会社の活動や業界の動向などマーケティングに関わる情報は、新聞記事を使ってリサーチすることができます。専門分野・業界の企業活動や開発トレインドに特化したニュースは入手が難しいものですが、専門紙、業界紙、ビジネス雑誌の情報が収録された新聞・雑誌記事データベースを使うことで、競合他社が取組む開発や営業活動の状況や、自社の重点市場・業界の変遷などをチェックすることができます。
また、専門紙・業界紙の特集記事や連載記事、各業界のキーパーソンへのインタビューやコメントを読むことで、広く業界の動向を知ることもできます。新製品開発や新規市場の調査に関わるデスクリサーチや、効率的な情報収集に新聞・雑誌記事データベースを活用ください。